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猪野ダム

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1. 猪野ダムの概要

 猪野ダム建設事業は、1978年の福岡大渇水を契機に多々良川総合建設開発事業の一環として計画され、1979年から実施計画調査・1985年に建設事業採択を受け、1992年10月に本体工事を着手している。ダム本体実施設計完了後、1991年に国の新規施策とされたシビックデザイン事業に採択され、景観基本・実施設計を経て、景観機能の創出を目指した施工に取り組み、2000年に竣工した。ダム建設まで福岡市水道局が従事し、その後、福岡県が管理を担っている。

 猪野ダムが位置する久山町は、福岡市都心から東方約13kmの位置にあり、福岡都市圏に属している。この周辺環境の中で、自然的特性を活用したレクレーション施設が多くみられ、特に猪野渓谷は、自然に触れ合う親水区間として多くの地域住民に利活用され、その上流部に猪野ダムが位置している。また、現行の町政の基本理念・将来像は、建設当時の基本計画を踏襲し、「国土・社会・人間」の健康を柱としたまちづくりが推進されており、環境や風景の一角を占める半永久的構造物として猪野ダムがその一翼を担っている。

 この猪野ダムは、景観機能の創出を目指した設計に取り組むとともに、福岡管内で始めて拡張レア工法(ELCM)が採用され施工された特徴を有している。

2. ダム概要図
​ダム平面図               [出典:関連資料 3) ]  
​ダム下流面図           [出典:関連資料 3) ]  
​ダム横断面図             [出典:関連資料 3) ]  
3. 地質概要
​ 猪野ダムが位置する三郡山地は、古生代二畳紀の地質を源岩とする変成岩類であり、三郡変成岩類と称される結晶変成岩により構成されている。

 ダムサイトの地質は、三郡変成岩類下部層とこれに貫入する細粒閃緑岩及びヒン岩を基盤岩とし、これらを覆って未固結な段丘堆積層、崖錐堆積層及び現河床堆積層が分布している。 基盤岩を構成する三郡変成岩は、塩基性火成岩及び同質砕屑岩類を源岩とする緑色片岩を主体とし、泥質岩源の黒色片岩及び珪質片岩を挟有している。

[関連資料 4) を加筆]

4. 設計概要(景観設計)
1) シビックデザインコンセプト
​ 
猪野ダムの基本概念は、、周辺環境・久山町計画・ダムの特性等を考慮し、[統一テーマ]水と緑に育まれいのち(ゲンジボタル)が輝く自然の健康豊かなダム 、[基本方針]①自然の健康を育み、自然環境との調和を図る ②自然生態系にやさしく、自然の生命(ゲンジボタル)が息づくダムづくりをめざす ③健康田園都市にふさわしい自然とふれあうダムづくりをめざすとした。

 そのデザインにあたっては、天端構造物を左右対称配置とし高さ・規模を統一することにより安定感及び重量感を与え、堤頂部に猪野渓谷の左右岸を結ぶ掛橋としてアーチ橋を模し、ダムの下流面の打設目地を利用した横線の導入によってダムが有する左右岸の曲線美を強調している。フーチング部は、ダムの構造線が地山に対して柔らかく接続できるよう隅部を曲線形状とし、フーチング部及び本体掘削法面の植栽を図ることにより、周辺地山との同化が経年的に進行している。

[関連資料 4) を加筆]

2) 設計原案と景観デザイン案のイメージパース
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猪野ダム原設計のイメージパース
 [主要な景観上の問題点]
 1)ダム全体 ①周辺の自然との調和にかける ②構造美が生かされていない

 2)構造物 ①構造物の配置や高さ、形状などが全体の調和を損ねている。等

猪野ダム景観デザイン案
 [主要な変更箇所]
 1)ダム本体上下流面 2)越流部天端付近の構造物 3)洪水吐き導流部 
 4)洪水吐勢工部 5)取水・利水放流設備 6)フーチング部 7)本体掘削法面
 8)下流取付護岸 9)ダム管理所等
[出典:関連資料 4)]
3) ダム竣工後2000年当時ダムサイト全景
 ダム軸は、右岸下流に地山のゆるみゾーンが位置するため、ダムのアバットと平面配置の関係から堤高部を上流側配置とし、左右岸に曲線部を設けている。
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4) 現況ダムサイト全景
​ ダムは、経年的な変化により自然の中に生きた健康的なダムへと変化し、さらにダムサイト周辺では裸地が緑化し、自然と同化した姿が確認される。

 天端には、バルコニーを設け、利用者の休憩・下流の視点場としてのアメニティー空間を形成している。

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5) 上空からの下流面
 天端構造物は、左右対称配置とし、高さ・形状の統一を図り整然美を強調している。堤体上下流面の天端部には、猪野渓谷の左右岸を結ぶ掛橋をイメージしアーチ橋を模している。
6) 天端からの下流眺望
 減勢工導流壁は、重厚感を与え周辺との調和を図るため化粧型枠により模様を付け、河床の左右岸への通路として、アーチ橋及び木橋を配置している。

 取付護岸は、ホタル護岸を用い、緑化により自然環境との調和を図っている。

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7) 上空からの右岸側下流面
 堤体下流面は、打設目地を利用して凹凸形状とし、曲線美を表現するため横線を強調し、水際に浮かぶアーチ橋をひきたてる相乗効果を期待している。
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8) 右岸天端からの右岸フーチング眺望
 フーチング部は一般公開して、左岸天端~河床~右岸天端への通路を確保し、地域に開かれたダムを創出している。

 フーチング部は、堤体と地山の接続を和らげるために曲線形状・化粧型枠による模様を取り入れ、フーチング全段に低木による植栽、左右岸2箇所に高木を植え、周辺地山との同化が経年的に進行している。

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9) 天端バルコニー部
 天端高欄部には、アーチ状のレリーフを施し、中央部にホタルをモチーフとしたパネルを入れている。歩行部は、使用骨材と同材の洗い出し平板を採用し、自然色を基調としたアスファルト舗装を行っている。
10) 親水広場
 親水広場は、自然の生命が息づく河川の再現を図るため、貯水池内の転石・草木等の利用による復元、駐車場・親水公園・親水性が高い水辺空間の提供を行い、健康豊かで自然と触れ合う公園づくりを行っている。
5. 施工概要
1) 仮設備配置計画図

 本工事では、原石山で使用骨材を採取し、右岸沢部に配置した骨材製造設備・コンクリート製造設備によりコンクリートを生産し、15.5t軌索式ケーブルクレーンにより本体打設を行っている。
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2) 拡張レヤー工法による施工
 猪野ダムでは、福岡管内で始めて拡張レア工法(ELCM)が採用している。拡張レヤー工法は、ダムの合理化施工の一環として開発されたもので、複数ブロックを一体的に施工する面状工法である。これにより、広い施工面が確保され、施工設備の効果的稼動、作業の安全性が向上している。
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6. 関連資料(関連資料紹介:工事誌、論文、報文等)

​1) 猪野ダムの施工計画について / 松村 晋   【ダム日本 No.604(H7.2)】

2) 猪野ダムの施工と景観設計について -拡張レヤー工法- / 兒玉 豊   【ダム日本 No.641(H10.3)】

3) 猪野ダムの設計と施工計画について  /能美登之和・蘆刈好行  【ダム技術 1999.4】

4) 猪野ダム工事誌・図面集  【平成12年・福岡県】

7. 近傍の施設等(観光・商業関連)
1) 伊野天照皇大神宮(いのてんしょうこうたいじんぐう)

 「九州の伊勢」と呼ばれ、神殿や建物の配置も伊勢神宮を模して築造されました。天照大神・手力雄神・萬幡千々姫命を祀る由緒正しいこの神社は、近くを猪野川が流れ、夏には涼を求めて多くの人が訪れます。また毎年春には大祭が催され、剣道や柔道の奉納試合に多くの人が訪れます。境内に生える欅の大木は町指定文化財に指定されており、周囲に自生する紅葉は秋の境内を美しく彩ります。

[久山町HPより引用]

 

2) 猪野公園

 伊野天照皇大神宮(いのてんしょうこうたいじんぐう)のすぐ近くに整備された公園。周囲を清流猪野川(いのがわ)が包み込むように流れ、春には桜、夏には川遊び、秋には紅葉と自然を思い切り楽しむことができます。またすぐ隣にある桜山はここ数年で植樹が行われ、新たな桜鑑賞スポットとして注目を集めています。

[久山町HPより引用]

3) 猪野ダム親水広場

 先に紹介したように、猪野ダム貯水池上流に設けた親水広場は、自然環境の調和・自然生態系との共存・親水性の導入を目指し、自然の生命(ゲンジボタル)が息づく河川の復元を図り、週末には多くの家族の憩いの場を提供している。

4) トリアス久山

 商業施設である「トリアス久山」が近傍に位置している。

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8. 近傍のダム
​ ・犬鳴ダム(4km)  ・長谷ダム(5km)  ・鳴淵ダム(7km)  ・力丸(10km)

一般社団法人 ダム工学会(九州ブロック)

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