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西之谷ダム

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1. 西之谷ダムの概要

 西之谷ダムは、鹿児島市内を流下する二級河川新川上流の鹿児島市西別府町西之谷地先に建設した重力式コンクリートダムで、治水のみを目的とした洪水調節専用ダム(流水型ダム)として建設したものであり、新川治水計画の一環をなすものである。

 流水型ダムとしては、わが国で3番目、九州管内では初めて建設されているダムである。

 この西之谷ダムは、シラス地帯に建設した重力式コンクリートダムで、基礎岩盤の強度特性を考慮し、1)堤体基本形状の合理化 2)アバット処理の合理化 3)基礎処理の省略 を行ったほか、所要の洪水調節容量を確保するために貯水池掘削による人為的改変に伴う自然環境への影響を考慮し、貯水池内整備を行っている特徴を有している。

                                                                                                                                                                                       [関連資料 13)を加筆]

2. ダム概要図
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[出典:関連資料 13)]
3. 地質概要
 ダムサイトの基盤地質は,第四紀更新世の火砕流堆積物(シラス及び溶結凝灰岩),海成~汽水成堆積物を主体とし、堆積年代が若く強度の小さな岩盤(いわゆる軟岩)からなる。下位より小山田層、加久藤火砕流堆積物、城山層、妻屋火砕流堆積物、入戸火砕流堆積物が左右岸方向に概ね水平に分布する。

 ダム基礎対象は城山層であり、造成アバットメント背面は大半の範囲が入戸火砕流堆積物となる。ダム基礎対象の城山層は、下位より中部砂岩層(Cms)、中部互層(Cms)、上部砂岩層(Cus)、上部凝灰岩層(Cut)であり、河床部には中部砂岩層(Cms)が広がる。城山層の構成地質はいずれも固結しており硬質であるが、河床部の中部砂岩層(Cms)の固結度が城山層の他構成地質に比べて相対的に劣る。

 一般的な重力式ダムの基礎岩と比べると全体的に軟質であるが,顕著な割れ目がほとんど発達していないこと,割れ目沿いの褐色風化がほとんど見られないことが西之谷ダムサイトの岩盤の特徴である。                                               

[関連資料 13)を加筆]

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4. 設計概要

1) 堤体基本形状の合理化

 河床部に分布する堆積軟岩である城山層のせん断強度は、τ0 =0.15N/mm2程度で決して高いせん断強度を有しているとは言い難い。これに起因して、せん断抵抗長を確保するために堤敷幅が広くなることにより、基礎岩盤の変形に伴う堤体底面部の引張応力の発生や打設設備の規模の増大が課題となったため、新たな視点で城山層に対する堤体基本形状の検討を行っている。

 従来の考え方に基づくフィレット形式と軟岩基礎に採用されるマット形式に対する比較検討を行った結果、①必要せん断抵抗長を確保するとともに堤体積の軽減が図れる。②マット部に施工継目(スロットジョイント:一体化)を設けることにより、堤体底面部の引張応力に対する課題を解決できる。③ブロック分割することで、打設設備の規模縮小が図れ、経済性を大幅に改善できる、などの理由から、マット型式を採用した。

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2) アバット処理の合理化( 傾斜型造成アバットメント)

 ダム本体は堅固な基礎岩盤に着岩させることが基本であるが、両岸アバット部には水平に分布する入戸火砕流堆積物(シラス)の軟質層(CLL 級、D 級)が存在し、せん断強度等が期待できないため、堤体を直接乗座させることが困難であったことから、この軟質層のシラスへの対応は当初からダム建設上の課題の一つであった。

 アバット処理工の検討にあたっては、従来工法である箱形地中連続壁工と人口岩盤を造成する傾斜型造成アバットメント工の比較検討を行い、コスト縮減、工期短縮及び改変面積の縮小の観点から傾斜型造成アバットメント工を採用した。

 傾斜型造成アバットメント工の設計は、施工時(堤体打設前)にはもたれ擁壁として所要の安定性(ダム軸方向二次元断面)を確保し、ダム完成後は堤体と一体のブロックとして上下流方向の滑動に対して所要の安定性を確保するように、その形状及び規模を設定した。

 この傾斜型造成アバットメント工の設計は、当該ダムで新規に開発した設計手法で、施工上は大分県の稲葉ダムで先に完成している。

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3) 基礎処理の省略( 水理地質構造を踏まえた止水計画)

 本ダムの止水計画については、ダム基礎岩盤である河床部の城山層及び両岸アバット部の入戸火砕流堆積物の新鮮部は、いずれも非亀裂性岩盤の密実で均質な岩盤であり、不透水性~難透水性(k=1 × 10-4~ 1 × 10-5㎝ /s)であることから、コンソリデーショングラウチング及びカーテングラウチング等の基礎処理は省略することとした。

[関連資料 13)を加筆]

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5. 貯水池内の自然環境対策

1) 自然環境対策の必要性

 本ダムは、所要の洪水調節容量を確保するため、約45万m3の貯水池内掘削を行っている。このため、貯水池内掘削に伴う人為的な改変により、当該集落に従来からあった田園風景が失われるとともに、景観や自然環境に影響を及ぼす可能性が生じた。

 このため、流水型ダムである特徴を活かし、貯水池全体を湿地として再生し、自然環境に対して与える影響を極力回避するための貯水池内整備を行った。整備にあたっては、過去の環境状況に対する地域住民ヒヤリングを行うとともに、模型を使った地域住民とのワークショップを3 回開催し、地元意見の反映にも努めている。

2) 貯水池内整備の方針

 地域の景観に配慮し、自然の営みを視野に入れ、河川が本来有している動植物の生息、生育、繁殖環境及び多様な景観を保全・創出することを目標とした。

  ①多様な種の生息、生育、繁殖環境を創出すること。

  ②里山風景を再生すること。

  ③人と生物のふれあいの場を創出すること。

3) 貯水池内整備の内容

 貯水池内底面には、現河川や沢水、湧水等から僅かな流水を導水した素堀りの湿地、クリーク及び棚田等を整備した。また、貯水池内の現河川の蛇行したままの法線形を維持し、既設の護岸を撤去し、自然の川に近い姿に復元するとともに、湿地が長期的に維持されるよう、小規模洪水でも度々貯水池底面に氾濫するよう河床を底上げした。河床底上げの際には、本来の元河床にある河床砂礫を採取・保存し、底上げ後、河床面に敷均し、本来の元河床の再生に努めている。

                                                                                                                                                                                       [関連資料 13)を加筆]

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4) 常用洪水吐きでの魚道計画

 西之谷ダムは、常用洪水吐きが河床標高付近に配置され、常時は貯水がないいわゆる「流水型ダム」であり、以下の特徴を有している。​

  ① 通常時には、河川としての連続性が確保できるため、魚類等の遡上・降下が比較的容易である。

  ② 貯水池内に流入した土砂を自然状態で流下させることができるため、下流河川の形態及び河床材料の変化への影響が小さい。

 このため、当ダムでは以下の対策を行っている。

  a. 魚類等の遡上・降下対策::生態系の保全の観点から、魚類等の遡上・降下を容易にするために、魚道を計画した。

  b. 常用洪水吐き等の摩耗対策:排砂の際には、砂礫が常用洪水吐き及び減勢工等を通過するため、摩耗対策を行った。

  c. 常用洪水吐きの閉塞対策:常用洪水吐きの規模が小さいため、流木等に対する閉塞対策を行った。

[関連資料 13)を加筆]

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6. 施工概要
 
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7. 関連資料(関連資料紹介:工事誌、論文、報文等)

1) 西之谷ダムにおけるアバット処理工  /西原幸男・岡積登・新田福美  【ダム技術 2003.6】

2) 常用洪水吐(オリフィス)による自然排砂を考慮したダム堆砂計画-鹿児島県西之谷ダム-  /新田福美・堀之内淳士  【ダム技術 2004.12】

3) 西之谷ダム(流水型ダム)における河床変動検討   /丸田満弘  【ダム技術 20012.4】   

4) 西之谷ダムの設計・施工(その1) -堆積軟岩及び火砕流堆積物(シラス)に対する地質調査-  /日高正明・丸田満弘・坂本忠義  【ダム技術 20012.9】 

5) 西之谷ダムの設計・施工(その2) -ダム本体の設計・施工-  /日高正明・丸田満弘・坂本忠義  【ダム技術 20012.10】   

6) 西之谷ダムの設計・施工(その3) -造成アバットメントの設計・施工-  /日高正明・丸田満弘・坂本忠義  【ダム技術 20012.12】  

7) 西之谷ダムの設計・施工(その4)-流水型ダムにおける水理構造物の設計・施工-  /日高正明・丸田満弘・坂本忠義  【ダム技術 20013.1】  

8) 西之谷ダムの設計・施工(その5) -貯水池掘削計画及び設計・施工-   /日高正明・丸田満弘・坂本忠義  【ダム技術 20013.3】  

9) 西之谷ダムの設計・施工(その6)-ダムサイトの透水性と止水計画及び施工-    /日高正明・丸田満弘・坂本忠義  【ダム技術 20013.4】   

10) 西之谷ダムの設計・施工(その7)-試験湛水の結果と安全性の評価-   /日高正明・丸田満弘・坂本忠義  【ダム技術 20013.5】  

11) 西之谷ダムの設計・施工(その8)-流水型ダムにおける貯水地内景観検討-   /日高正明・丸田満弘・坂本忠義  【ダム技術 20013.6】  

12) 西之谷ダムの設計における合理化について ~シラス地帯に建設した重力式コンクリートダム~  /日高正明  【九州技術 2015.1】

13) 西之谷ダム工事誌・図面集  平成26年3月

8. 近傍の施設等(観光・商業関連)
​ 西之谷ダムは、鹿児島中央駅から直線距離で約4.2kmと近接した位置にあり、鹿児島市の数少ない自然豊かな場所に位置している。
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一般社団法人 ダム工学会(九州ブロック)

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