金武ダム


1. 金武ダムの概要
金武ダムは、沖縄東部河川総合開発事業の一環として、米国陸軍工兵隊が昭和36年に建設した利水専用の旧金武ダム(総貯水容量約82万m3、堤高13mのアースダム)を洪水調節、流水の正常な機能の維持、水道用水及びかんがい用水の供給を目的に億首川(流域面積16.4km²、流路延長8.0km)の河口から約3km上流地点(旧金武ダムの下流約120m地点)に建設した堤頂長465.5m、堤高39.0m、総貯水容量856.万m3の台形CSGダムである。
この金武ダムで採用された台形CSGダムは、世界で初めてダム本体に採用したコスト縮減や環境の保全に貢献するために開発された新しいダムダム型式(河川管理施設等構造令の適用除外規定における大臣特認制度適用ダム)で、ダムの形状特性を利用して非常用洪水吐きには、ラビリンス型越流長を採用している。
億首川下流のマングローブ林には、メヒルギとオヒルギが多く、河口部ではヤエヤマヒルギが良く見られる。沖縄本島で自生しているヒルギモドキはここでしか見ることができないと言われている。マングローブ林周辺には、カニやエビ、貝など小さな生き物たちのすみかとなり、その生き物たちをエサとする野鳥たちも集まることから、多くの生き物たちを観察することができる。
なお、当ダムは、ダム建設時の名称は億首ダムであったが、地元からの要望で供用開始した2014年4月に金武ダムへ名称変更している。
(関連資料5)等を一部加筆)
2. ダム概要図

[出典:関連資料5)]

[出展:関連資料5)]
3. 地質概要
金武ダムサイトの地質は、砂岩・粘板岩互層からなる古第三紀嘉陽層を基盤岩とし、これを国頭礫層、琉球石灰岩から構成される第四紀の琉球層群が厚く被覆している。
(関連資料 1))
4. 設計概要
1) 台形CSGダム
台形CSGダムは、台形形状のダムにCSG工法を適用して材料の合理化、設計の合理化、施工の合理化を同時に達成することで、環境負荷の軽減、コスト縮減を可能とした新しいダム型式である。
CSGとは(Cemented Sand and Gravel)の略で、河床砂礫や掘削土など現地発生材にセメントを添加、混合したものである。
[台形CSGダムの特徴]
◇設計の合理化
台形形状にすることにより、耐震安定性が向上し、堤体材料の必要強度を小さくすることができる。また、基礎岩盤に対する要求が低いことから、ダムサイト選定の自由度が増大する。
◇材料の合理化
堤体材料の必要強度が低いため、材料に対する要求性能が小さく材料選定の自由度が大きい。
◇施工の合理化
簡易な施工設備により迅速に施工ができる。
(関連資料 5),6) )


[出展:関連資料5)]
2) ダム型式の選定
金武ダムの堤体形式は、「河川管理施設等構造令」第73条第4号の規定による特殊な構造の河川管理施設等の認定手続き(=「大臣特任申請」)に則り、国土技術政策総合研究所の技術的検討を受けた上で台形CSGダム型式を選定した。
台形CSGダム型式は、堤体基礎および内部に発生する応力を大幅に抑制することが可能なため、コンクリートダム型式を選定した場合に要する右岸脆弱部対策工(脆弱部基礎の必要せん断強度不足を補うため、脆弱部の一部をコンクリートに置き換える等)を施さずに堤体の上座が可能である。
なお、金武ダムにおける重力式コンクリートダム型式に対して台形CSGダム型式にしたことによるコスト縮減効果は、直接工事費で19億減(事業費で27億減)、コスト縮減率は79%となっている。
(関連資料 5),6) )
3) 常用洪水吐き型式
原案は従来型の上面ナイフエッジ型で計画され、必要な開口部寸法は、水理実験により幅8.4m×高さ1.6m(2 門)となった。開口部の高さが2m以下であることから流木、塵芥のためのスクリーンが必要であり、開口幅が広いことからかなり大きなスクリーン規模となり、経済性・施工性において問題が生じるものと予想された。修正形状としては、まず、上方の非常用洪水吐きの構造的な負担(桁構造)を軽減するため4 門配置とした。次に、開口高2m以上でかつ放流能力の必要条件を満足する三方向ナイフエッジ形状を水理実験により求め、幅3.2m×高さ2.15m(4 門)としている。
(関連資料 5)を引用)

4) 非常用洪水吐き型式
原案は全て円弧付き台形越流頂の直線型越流頂で計画され、水理実験により、1径間14m×8門となった。億首ダムではCSG による合理化施工が計画されているが、直線案の場合、常用洪水吐きと併せて11 ブロック165m に亘る非常に大きなものとなり、上部施工での施工の合理化がほとんど図られない。また、側水路型式の比較的高い導流壁は非常に長い延長が必要になり、施工性・経済性から問題があった。
そこで、常用洪水吐き設置ブロック上にも非常用洪水吐きを設置し、ダム軸に対して平面系をジグザグにして実質的な越流頂を大きくし、水路単位幅あたりの越流量を大きくするラビリンス型越流頂を採用している。
(関連資料 5)を引用)

5. 施工概要
1) 仮設備配置計画図

[出展:関連資料5)]
母材山は、貯水池末端付近に位置しており、母材ストックヤードは右岸土捨場および左岸貯水池内ヤードに配置した。CSG材製造設備、CSG製造設備、コンクリート製造設備は、堤体砂岩上流約300mのヤードに配置している。
コンクリートは、購入骨材を用いて1.5m3の二軸強制ミキサで製造し、10tダンプトラックまたは10tアジテータトラックでダムサイトまで運搬している。止水コンクリートおよび構造用コンクリートは、堤体内のクローラクレーンまで10tダンプトラックで運搬し、コンクリートバケットに積み替えて打設した。左岸部は150tクローラクレーン、河床部および右岸部は300tクローラクレーンを使用している。
[関連資料3)]
6. 環境保全措置
億首川流域は重要な動植物(タナゴモドキ,タウナギ,タイワンキンギョ,カンテンコケムシ及びタイワンアシカキ等)が生息・生育している地域である。また、下流域にマングローブ林が生育する汽水域になっている。そのため、環境調査を実施し、学識経験者の指導、助言を受けながら、生息環境の復元など環境保全対策を実施した。
(北部ダム統合事務所HP ダム資料室を引用)

7. 関連資料
1) 億首ダム台形CSGダムの岩級区分 /横森源治・嵩本博・山下武宣 【ダム技術 2004.9】
2) 億首ダムにおける台形CSG ダムの施工(その1)-確認試験- /吉田大・安仁屋勉・上原功・平松信太郎 【ダム技術 2012.4】
3) 億首ダムにおける台形CSGダムの施工(その2)-施工設備および施工方法- /吉田大・安仁屋勉・上原功・平松信太郎 【ダム技術 2012.5】
4) 億首ダムにおける台形CSG ダムの施工(その3)-品質管理- /平松信太郎・上原功 【ダム技術 2014.1】
5) 億首ダム技術資料 【平成26年3月 沖縄開発庁沖縄総合事務局 北部ダム事務所】
6) 億首ダム細部技術資料 【平成26年3月 沖縄開発庁沖縄総合事務局 北部ダム事務所】
7) 億首ダム図面集 【平成26年3月 沖縄開発庁沖縄総合事務局 北部ダム事務所】
8. 近傍の施設等
1) 億首川プロムナード
全長280mの遊歩道「億首川プロムナード」が設置されている。ここでは、散歩をしながら億首川に群生する川辺の縮物や、干潟に生息する生き物を間近で観察することができる。
□カヌー体験
カヌーに乗って億首川に広がる亜熱帯独特の自然を体感することができる。
□水牛者
三線の音色を聞きながら水牛に乗ってのんびりマングローブを観察することができる。
(北部ダム統合事務所HP ダム資料室を引用)

2) 観音寺・金武鍾乳洞
観音寺は、16世紀に日秀上人によって開かれ、現存する観音寺は、昭和17年に再建されたものであるが、建築手法には近世社寺の手法が取り入れられている。沖縄県の社寺建築の多くは、沖縄戦で焼失したが、幸い観音寺は戦災を免れ、古い建築様式をとどめた貴重な木造建築である。
また、観音寺の境内にある洞窟「日秀洞」には観音寺鎮守「金武権現(熊野三所権現)」と「水天」がお祀りされている。
(北部ダム統合事務所HP ダム資料室を引用)

3) タコライス
タコライスは、メキシコ風アメリカ料理のタコスの具材を米飯の上に乗せた沖縄料理で、ここ金武町が発祥の地である。
(北部ダム統合事務所HP ダム資料室を引用)
4) ダムインフラカード
ダムカードとは別に、観光客を含め一般の方に、観光に貢献するインフラについて、広く容易に理解してもらうため、インフラ施設を対象とした「沖縄観光インフラカード」が配布されている。
(北部ダム統合管理事務所HP ダム資料室 ダムインフラカードを引用)
