井手口川ダム




1. 井手口川ダムの概要
井手口川は佐賀県伊万里市の東部に位置し、その源を八幡岳(標高763.6m)に発し、山間部を西流し、長野地先で一級河川である松浦川(25K200)に合流する流域面積6.03km2、流路延長5.1km の二級河川である。井手口川ダムは、松浦川水系井手口川の佐賀県伊万里市大川町東田代地先に多目的ダムとして建設したもので井手口川総合開発の一環をなすものである。
井手口川ダム建設事業は、平成元年度から実施計画調査を開始し、平成8年に建設事業の採択を受け、平成20年3月にダム本体工事に着手、平成24年5月に試験湛水を完了し、ダム管理へと移行した。
井手口川ダムの特徴として、①堤体設計の合理化(低角度シームの適正な強度評価による基礎対象岩盤の見直し、造成アバットメント(傾斜型)の採用)、②止水処理の合理化(水理地質構造の検討による高透水部の連続性,浸透経路の明確化、止水処理を考慮したダムの座取り変更、表面遮水工の採用によるカーテングラウチング施工範囲の合理化)、③洪水吐きの合理化(オリフィスの配置を側水路内に変更したことによる副ダムの省略(側水路内で減勢)、シュートブロックの設置による側水路壁高の低減、側水路長の変更による堤体導流壁の省略)によって、約37.5 億円(直接工事費ベース)のコスト縮減が行われている。
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2. ダム概要図



3. 地質概要
ダムサイトの地形は、左岸側は眉山(標高518m)から連続する尾根から伸びるやせ尾根形状を呈し、右岸側は厚さ約30mの火山泥流堆積物からなる山頂平坦面で、河川とほぼ並行したやせ尾根形状を呈す。
ダムサイトの地質は、新生代古第三紀漸新世に堆積した杵島層群と、これに貫入した新第三紀中新世の肥前粗粒玄武岩類からなり、右岸の中腹から山頂にかけて、低固結の火山泥流堆積物が分布する。
設計時の地質上の大きな課題は、①低角度シームが分布する岩盤の強度評価,②火山泥流堆積物のアバット処理,③水理地質構造に対する止水処理の3 つであり、施工時には、④火山泥流堆積物の高透水の開口亀裂対応が課題となっている。
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4. 設計概要
1) ダム軸の決定
ダム軸の決定については、地形条件に加え、当ダムサイトの地質上の課題である水理地質構造への対応(止水計画)と現計画貯水池容量の確保(貯水池掘削による確保)の両面から総合的に判断して、E軸とした。
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2) 堤体安定検討
設計剪断強度は、杵島層内に分布する低角度シームを乗り移る形で剪断破壊が生じるという考えに基づいた仮想剪断面を設定して算定している。したがって、剪断に対する安定性を評価する際には、仮想剪断面から堤体の間の岩盤の影響を加味し、岩盤ブロックの自重、仮想剪断面までの水深による静水圧を考慮した。
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3) 右岸造成アバットメント
当ダムサイトの右岸側には、河川に平行する尾根沿いに火山泥流堆積物(D~DH 級)が分布しているため、所要の堅岩線まで掘削してダムをアバットさせる場合には、基礎掘削量および堤体規模が非常に大きくなり、貯水池の容量不足量も大規模となる。そのため、本体工事数量ならびに貯水池不足量の低減を目的とし、火山泥流堆積物に対してアバット処理工を実施する計画とした。
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4) 洪水吐き
井手口川ダムの洪水吐きは、地形条件,放流条件および設備型式の特徴を有効に活用して、コスト縮減に寄与する洪水吐きの配置,新たな形式を採用し、水理模型実験により水理性の確認を行った。以下に、その特徴を示す。
・ 減勢工型式 :河床部の地形条件、現河道の位置を考慮して、左右非対称の側水路型減勢工とした。
・ 減勢方法 :常用洪水吐きを側水路内に配置し、常用洪水吐きからの放流水を側水路で減勢させることとした。また、副ダムを省略することで側水路内水位が低下し、下流河道への負荷が軽減されることから、副ダムは省略した。
・シュートブロック :側水路内の水位低下を目的として、常用洪水吐きの直下にシュートブロックを配置し、接続水路内および下流河道の流況の安定化を図るために、側水路型減勢工と接続水路との接続部を円弧で擦り付け、左岸部にシュートブロックを配置した。また、側水路長さを延長することで堤体導流壁を省略した。
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5) 基礎処理工
当ダムサイトの基礎岩盤には、砂岩頁岩互層中に粗粒玄武岩が貫入しており、この粗粒玄武岩は冷却節理が発達し、50Lu 以上の高透水を示す。また、深部から浅部,河床部からダム下流や右岸他流域まで広く分布し、連続した透水経路となることが懸念されていた。また、粗粒玄武岩は貫入岩であり深部まで深く連続しているため、カーテングラウチングにより粗粒玄武岩を完全に止水することは、現実的に不可能と考えられた。そのため、水理地質構造の検討により、高透水部の要因や浸透経路を把握し、粗粒玄武岩に対しては、浸入口を表面遮水工で被うこととし、基礎浅部の堆積岩高透水部に対しては、カーテングラウチングにより止水を行うものとした。
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5. 施工概要
井手口川ダムの堤体コンクリートは、骨材を購入し、ダムサイトでコンクリートを製造している。製造したコンクリートは、ハイダンプトラックで運搬し、クローラクレーン300tにて打設を行っている。
打設工法:拡張レヤー工法(ELCM)
主打設設備:クローラクレーン300t
コンクリート製造設備:1.5m3×3台
セメントサイロ:400t
コンクリート運搬設備:ハイダンプトラック
骨材調達方式:購入(最大骨材寸法80㎜)
使用セメント:中庸熱フライアッシュセメント
なお、基礎岩盤中の頁岩及び砂岩頁岩互層において無養生で放置するとスレーキングによって岩盤劣化が発生することが確認されていたため、スレーキング防止対策を行っている。
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