大瀬内ダム





[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]
1. 大瀬内ダム(上部ダム)の概要
上部ダムサイトは、大瀬内谷川の最上流部の標高750~850mに位置し、大きな山体の頂上部に位置している。上部ダムの当初案は、施工性・経済性を考慮して、当社の既揚水地点(天山・太平)と同様に、ダム形式として中央土質遮水壁型ロックフィルダム、調整池の遮水方法としてグラウト遮水工法を採用する予定であった。しかし、上部ダムサイトの特徴として、左岸尾根部地山の厚さが満水位標高では最小で50mと薄く深部に20ルジオン以上の高透水ゾーンが点在していたこと、右岸尾根部は風化が進んでいたことから、ダム形式として表面遮水壁型ロックフィルダムを2堤(大瀬内ダム:65.5m、かなすみダム:42.5m)、遮水形式として全面遮水型を採用した。また、遮水材料については、アスファルト、コンクリート、ゴムシート等が考えられたが、遮水の信頼性、施工性、経済性、実績等を考慮してアスファルトを選定した。
[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]
2. ダム概要図

[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]


[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]
3. 地質概要
当地点は西南日本地質構造区分のうち四万十帯南帯に位置し、新生代古第三紀始新世~漸新世前期の日向層群と、これに貫入した新第三紀中新世の尾鈴山火山深成複合岩体が基盤として分布している。

[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]
図-1.2.6に上部調整池周辺の地質平面図を示す。上部ダム調整池周辺の地層は四万十累層群の日向層群に属する。基盤は頁岩および砂岩よりなる。頁岩は砂質葉理を伴うもの、砂岩層を伴い互層状を呈するもの、スランプ相を呈するもの、砂質で葉理が不明瞭なものといった岩相が認められた。また、砂岩は中~細粒の均質な岩相を呈するものであった。両岸尾根の緩斜面部や河床付近の低地には、これらの基盤岩を覆う形でアカホヤ火山灰や崩積土が分布している。

[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]
4. 設計概要
a アスファルト表面遮水壁の構造
地山の整形後の施工となるアスファルト表面遮水壁は、舗設面積は約30万m2で、国内最大の全面表面遮水壁型である。また、斜面部の遮水壁は5層構造(上部遮水層×2層、中間排水層、下部遮水層、レベリング・マカダム層)で、その厚さは30cmとした。一方、底面部については、施工の効率化(1層当りの施工厚を厚くし、所定厚の確保に必要な層数を低減)、品質向上(遮水層の1層施工により層間ジョイントをなくし、ブリスタリングの発生抑制)を目的として国内初の厚層舗設工法を採用した。遮水壁は、3層構造(上部遮水壁、中間排水壁、下部遮水層)で、その厚さは26cmとした(図-3.2.3参照)。
また、舗設基盤には、ロック材と遮水壁との緩衝および切土部での遮水壁背面の排水を目的として、トランジション層を設置した。
アスファルトコンクリートの粗骨材とトランジション材は現在発生の頁岩を、アスファルトコンクリートの細骨材は、購入砂や現地製造砂より安価なフェロニッケルスラグ(日向市産)を使用することとした。

[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]
b 調整池の形状
調整池の形状は、地山を切土・盛土により整形し、左右岸尾根部の増厚、遮水壁面積の低減、舗設基盤面の凸部をなくすこと(凸部は遮水壁の弱点となる)等を総合的に勘案して、4つの曲面部を有する形状とした。四隅はできるだけ応力の集中をさけ、施工を容易にすることから大きな曲率とした。また、ダム上流側(調整池側)の勾配は、遮水壁舗設の施工性を考慮して1:2.5、下流側は滑りに対する安定性から1:2.0とした。掘削総量は約670万m3で、このうち約425万m3を大瀬内ダム、かなすみダムをはじめとする盛立材に利用した。なお、施工順序は、2つのロックフィルダムの築堤と周辺地山の切盛により調整池と造成するとともに、洪水吐、取水口、監査廊などのコンクリート構造物を構築した後、遮水壁の舗設基盤とするトランジションの盛立、アスファルト遮水壁の舗設を行うこととした。
[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]
5. 施工概要
a 遮水壁
ⅰ) 遮水壁の安定性
遮水壁の安定性は、基盤も含めたモデルでのFEMによる静的・動的解析等により、最大発生ひずみと材料試験により得られた許容ひずみを比較して評価した(図-3.2.4参照)。さらに、遮水壁とコンクリート構造物(取水口、洪水吐き等)との接合部については、解析や現場試験などを踏まえ設計を行った。
ⅱ) 遮水壁の施工
遮水壁の施工は、各層ごとにアスファルトコンクリートの製造、運搬、敷均し、一次転圧、二次転圧の順に実施することとした。このうち、斜面部の施工は、ウインチポータ、ダンパー車、斜面用アスファルトフィニッシャ、斜面用振動ローラ等の専用機械を用いた。また、当地点では、国内のアスファルト遮水壁としては初めて舗設幅8.0mのアスファルトフィニッシャを用いることにより施工の効率化を図った。
なお、遮水壁に使用する各種アスファルトコンクリートは、調整池上流の土捨場内に設けた専用のアスファルトプラントで製造・供給した。
b 洪水吐
河川管理施設等構造令第2条に基づき、ダム設計洪水流量を算定した。この結果、地域別比流量図に基づく洪水流量が最大となり、ダム設計洪水流量はフィルダムであることを考慮して1.2倍の113m3/sと定めた。
洪水吐は、流入部を横越流式側水路型、導流部をシュート式、減勢部を副ダム跳水式水平水叩き型とし、水理模型実験を実施して最適なものとした。特に減勢工部については、自然の滝を利用して減勢効果を高め、縮小化を図るとともに、自然の滝を残すことで周辺景観に配慮した。
[出典:小丸川発電所 建設工事記録(上巻)]
6. 関連資料(関連資料紹介:工事誌、論文、報文等)
1) 小丸川発電所上部調整池の設計とアスファルト遮水壁の施工 -表面遮水壁型ロックフィルダム-/九州電力株式会社小丸川発電所建設所上部ダム工事区長 田代 幸英【第53回ダム施工技術講習会(H15.7.23)】
2) 小丸川発電所上部調整池の設計とアスファルト遮水壁の施工 -表面遮水壁型ロックフィルダム-/田代幸英・穴井幸康・笹田俊治【ダム日本 No.709(H15.11)】
3) 小丸川発電所上部調整池の設計とアスファルト遮水壁の施工 -表面遮水壁型ロックフィルダム-/田代幸英・穴井幸康・笹田俊治【ダム日本 No.709(H15.11)】
4) 小丸川発電所 建設工事記録(上巻)/平成25年3月 九州電力株式会社
5) 小丸川発電所 建設工事記録(下巻)/平成25年3月 九州電力株式会社
7. 近傍の施設等(観光・商業関連)
1) 小丸川発電所
九州最大の水力発電所(揚水式)で、宮崎県次世代エネルギーパークのひとつです。
宮崎県のほぼ中央部の児湯郡木城町にあり、町の中央を流れる小丸川の支流大瀬内谷川の最上流部に上部ダムを築造、小丸川中流部に下部ダムを築造し、この間の落差約650mを約2.8kmの水路で連結し、地下約400mに設けた発電所で、最大出力120万キロワット(一般のご家庭で約40万軒相当)の発電を行います。
小丸川発電所は”水の力で水車を回して電気を作る”だけでなく、”発電に使った水をくみ上げて(揚水して)再び発電に使う”ことができるため、繰り返し発電ができます。
2) ピノッQパーク
ピノッQパーク横には、県内ではここだけにしかない大型トランポリン「ふわふわドーム」やコンビネーション遊具、健康遊具等もあり、子供から大人まで楽しめるスポットとなっていますので、発電所施設と併せてご利用ください。
3) 中八重緑地公園
小丸川発電所の土砂埋立地を造成した35,000m2の敷地には、サッカーコート2面の広大な芝生広場があり、サッカーやラグビーの試合等に利用できます。長さ36m、幅18mの大型野外テントも完備し、雨天時でも遠足等で利用できます。