土師野尾ダム



1. 土師野尾ダムの概要
土師野尾ダムは、二級河川東大川水系楠原川の長崎県諫早市に洪水調節、流水の正常な機能維持および水道用水の供給を目的として建設された重力式コンクリートダムである。本ダムは、昭和57年3月に建設工事を開始し、本体コンクリート38,000m3の打設を昭和59年6月に完了している。
本ダムでは、地質構造と関連して、右岸側で大規模な地滑り対策が行われている特徴を有している。
2. ダム概要図



3. 地質概要
ダムサイトに分布する基盤岩は、新生代古第三紀の諫早層群に属する頁岩・層状砂岩・塊状砂岩より構成されている。
ダムサイトに分布する地層は、全体に右岸上流から左岸下流に15°程度傾斜する同斜構造となっている。このため、右岸側の山腹は流れ番に相当し、山腹の傾斜は流れ番に相当し、山腹の斜面傾斜は比較的緩い傾向にある。これに対し、左岸側の山腹は受け磐となり、一部急崖をなし、露岩も多く認められている。
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4. 設計概要
1) ダム軸・ダム型式
本ダムのダム型式は、当初、ロックフィルダムとして計画されていたが、地質調査の進捗に伴い、基礎岩盤が地下深部まで高透水性であり止水処理に課題があること、築堤材料のうちロック材の採取がダムサイト周辺では困難であること等が明らかとなり、計画中途で重力式コンクリートダムに変更されている。
ダム軸は、当初、上流案で検討されていたが、地質要因から技術的に難しく、下流岸の右岸地山は、塊状砂岩が分布し、オープンクラックが顕著で全体的に緩んでることから放棄している。
これに対して、現ダム軸は、沢部の竪坑調査が行われた結果、河床に粘土層が存在しないことが確認され、上流の崖錐および下流のゆるみゾーンの中間にあたるダム軸が最適とされた。

2) 右岸取り付け型式
現ダム軸の右岸は、潜在的地すべりゾーンの直下の沢部にあり、その取り付け工法が課題となり、堤体取り付け工法の比較検討が行われている。
堤体取り付け工法としては、①ピラー型 ②直接アバット型 ③隔壁型 ④巻き込み型 ⑤すべりゾーン除去型 等が検討されているが、最終的に右岸取り付け部の堤高を低標高にすることで対処している。
3) 常用洪水吐き
一般に自然調節方式の洪水調節は、オリフィス形式の洪水吐を採用する事例が多いが、当ダムのように常時満水位からサーチャージ水位までの高さが2.5mと低い場合、オリフィスの設置が難しい。
このため、サーチャージ水位に対して、常時満水位まで堤体を切欠いたオープンチャンネル方式の洪水吐きを採用している。

4) 基礎処理工
基礎処理工は、本ダムの水理・地質特性(左右岸の地下水位が低く、基礎岩盤に高透水ゾーンが広範囲に分布し、また左岸部は、やせ尾根を形成し、鞍部に高角度の断層が位置する)を考慮して、カーテンおよびリムグラウチング(L=456m)及び左岸でアースブランケットを実施している。
[関連資料 2) を加筆]

5. 地すべり対策工
ダムサイトの右岸上流部は、層状砂岩と頁岩の薄層が緩い傾斜をなす流れ盤を形成しており、計画当初から地山の安定性が懸念されていた。
このため、最終的には、排土工+抑え盛土工+ロックアンカー工の併用した対策工を実施している。
ロックアンカー工法は、ダム本体工程を考慮した場合、現場打ちのコラムを打設して緊張するには、工程・施工性に対して課題が大きいため、地山の覆工板を工場でPSC版として製作して現場に搬入し、所定の位置に据え付けている。
PSC版設置後は、連結部材をPSC版とヒンジ結合で現場打ちコンクリートで連結し、一次試験のあと、一時定着を行い、地山のクリープが落ち着いた段階で最終的な確認試験を行って、定着を完了させている。
[関連資料 2) を加筆]



6. 施工概要
堤体コンクリートの打設は、バッチャプラントで練りあがったコンクリートを2.0m3バケットに移し、バンカー線上を台車で運搬し、H型ケーブルクレーン(6.2t)で吊り上げ、打設を行っている。

7. 関連資料
1) 土師野尾ダムの基礎処理について /高橋龍城・野口浩 【ダム技術1987(22)】
2) 土師野尾ダム工事誌 昭和62年3月 長崎県諫早土木事務所